携帯電話を利用した音楽サービスの概念図 インターネット上にデータを保存する「ストレージ」を利用し、ユーザーが自分のCDなどの音楽データを保存、いつでも携帯電話にダウンロードして聴けるサービスの提供が著作権侵害に当たるかどうかが争われた訴訟の判決で、東京地裁(高部真規子裁判長)は25日、著作権侵害に当たるとの判断を示した。
問題のサービスは、情報通信会社「イメージシティ」(東京都台東区)が05年11月から始めた「MYUTA」。ユーザーは音楽データをパソコンから同社のサーバーに保存し、携帯電話へのダウンロードはユーザー本人しかできない。
このサービスに対し、日本音楽著作権協会(JASRAC)は著作権侵害だと指摘。同社はサービスを中止したうえで、同協会を相手に著作権侵害に当たらないことの確認を求めて提訴していた。
訴訟で同社は「実質的にデータ複製や送信をするのはユーザー自身。不特定多数への送信はしておらず、著作権は侵害しない」と主張したが、判決は「システムの中枢になるサーバーは同社が所有、管理しており、同社にとってユーザーは不特定の者。複製と公衆(不特定多数)への送信の行為主体は同社だ」と判断。協会の許諾を受けない限り、著作権を侵害すると認定した。【北村和巳】
「音楽保存サービス:ストレージ利用は著作権侵害 東京地裁」(毎日新聞)
このサービスの概要についてはインフォコム社のプレスリリースが参考になります。
ストレージサービスがなぜ著作権侵害になるのでしょうか。報道の内容から検討してみます。
判決は、著作権のうち複製権と公衆送信権の侵害を認定しているようです。
複製権から検討します。複製権は著作権法21条に規定されています。
(複製権)
第21条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
「複製」については定義規定が置かれています。
第1条1項15号 複製 印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。
イ 脚本その他これに類する演劇用の著作物 当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること。
ロ 建築の著作物 建築に関する図面に従つて建築物を完成すること。
つまり複製とは著作物の有形的再製のことをいいます。定義規定のせいで、かえって難しくなったような気もしますが、この定義規定の趣旨は、放送や演奏などの無形的再製を含まず、著作物を具体的に存在する物の中に収録する有形的再製に限定するということにあります。
ストレージサービスはハードディスクという有体物の中に著作物を収録するサービスですから、ユーザーの行為は複製権侵害にあたりそうです。
ここで報道によると、イメージシティ社は「実質的にデータ複製や送信をするのはユーザー自身。不特定多数への送信はしておらず、著作権は侵害しない」と主張したようです。
ユーザー自身が複製行為を行っているとすれば、著作権法31条1項の私的使用にあたりそうです。
(私的使用のための複製)
第30条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
第1号 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合
第2号 技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第120条の2第1号及び第2号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合
著作権法30条は「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする」場合には、複製権侵害にあたらないと規定しています。
本サービスのプレスリリースによると、本サービスもこれにあたることを前提として開始されたようです。
インターネット上における自分だけのオンリーワンセイフティーボックス機能は、「自分だけのオンリーワンセイフティーボックス」という観点により、著作権法上で認められている私的複製の領域内のサービスとして位置づけられ、個人のパソコンに発行するアクセスキーと携帯電話固有のキーを紐づける事で可能となり、携帯電話利用者が所有するCD楽曲等のパソコンに取り込んだ個人使用を目的に収集した音楽データを、インターネット上に安心・安全な方法でファイリング/カタログ化し、携帯電話でいつでもどこでもアクセスやダウンロードしてお楽しみいただく事を実現します。
パソコンと携帯電話の融合サービスの音楽版『MYUTA』サービス開始のお知らせ(インフォコム社プレスリリース)
ところが、本サービスは、実はユーザーにとっても私的複製にあたりません。というのも、著作権法30条1項1号の私的複製にあたらない場合に該当するからです。
30条1項1号は、公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製する場合には、私的複製にあたらないとしています。
自動複製機器とは複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいいます。本サービスを提供しているサーバ及び関連ソフトウェアもこれにあたりますので、本サービスを利用して音楽を複製するユーザーにも複製権侵害が成立することになります。
なぜこのような規定が設けられているのかを理解するためには、私的複製が許される根拠に遡って考える必要があります。
私的複製の根拠は、著作物の通常の利用と衝突せず、著作者の経済的な利益を害するおそれがないことにあります(『著作権法逐条講義(五訂新版)』(2006年、著作権情報センター)、223頁)。ですから大規模な複製は許されません。著作権法30条1項は「その使用する者が複製することができる」としていますが、これは外部の業者を利用した複製は許されないという趣旨なのです。なぜならば、外部の業者を利用した複製は大規模であることが多く、著作者の経済的な利益を害するおそれがあるからです。
もっとも外部の業者といっても、顧客自身に複製機を利用させて複製を行うというタイプの業者もあります。この場合は、「その使用する者が複製する」といえますから、形式上は私的使用になってしまいます。しかし、大規模な複製がなされることが多く、著作者の経済的な利益を害するおそれがあるという点では、業者が複製した場合と同じです。
そこで著作権法30条1項1号は、そういった業者の複製機を使って複製を行う場合も私的複製に該当しないということを明示しているわけです。
ちょっと話がずれますが、起草者は個人がビデオ・レンタルショップで借りてきた映画や、テレビ番組を録画するなどして、家庭に膨大な映像ライブラリを構築するようなことも、30条の規定の適用対象にならないとしています(『著作権法逐条講義(五訂新版)』(2006年、著作権情報センター)、225頁)。
「2003年からiTunesを使い始め、ライブラリが849GBに達した男」(GIGAGINE)みたいな人は、日本にもいそうですが、起草者の見解に従う限り、日本の著作権法では複製権侵害にあたるので注意が必要です。
話をもとにもどします。ストレージサービスにも著作権法30条1項1号が適用されますから、本サービスを利用した顧客の音楽データ複製行為は私的使用にあたらず、複製権侵害になります。
そして、自動複製機器を設置した業者は、顧客による複製権侵害を幇助していることになりますから、業者は顧客の著作権侵害行為を幇助した者として損害賠償責任を負います(民法719条2項)。
(共同不法行為者の責任)
第719条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2 行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
しかし、この法律構成にはひとつ問題があります。
差止請求権について定めた著作権法112条1項は次のように規定しています。
(差止請求権)
第112条 著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
この規定によれば、差止請求権は著作権を「侵害する者又は侵害するおそれがある者」に対してしか行使することができません。
権利者はユーザーに対しては差止請求権を行使することができますが、サービスを提供する業者は侵害を幇助する者にすぎませんから、差止を求めることはできないことになります。
つまり著作権侵害を幇助している相手には、損害賠償を請求することはできても、差止を請求することはできないのです。
そんなわけで権利者の側としては、なんとかサービス業者を侵害者と考えることができないか考えることになります。
というのも、個々のユーザーの数は膨大で、いちいち差止請求権を行使することは困難だからです。
ここで用いられるのが、カラオケ法理です。カラオケ法理は、なんとかカラオケスナックから著作権利用料を取れないかと考える音楽著作権者とカラオケスナックとの法廷闘争から生み出された法理論です。
カラオケ法理によれば、
1 業者の支配又は管理のもとで著作物が利用されていること
2 業者が営業上の利益を増大させることを意図していること
という二要件を満たせば、業者自体を侵害主体とすることができることになります。最高裁はクラブ・キャッツアイ事件(最判昭和63年3月15日民集42巻3号199頁)においてカラオケ法理を採用しています。
本サービスにおいても、イメージシティ社はユーザーの複製行為を管理しているといえますし、これによって利益を増大させることを意図しているといえますから、イメージシティ社自体を侵害主体と考えることができます。
報道によれば東京地裁は「システムの中枢になるサーバーは同社が所有、管理しており、同社にとってユーザーは不特定の者。複製と公衆(不特定多数)への送信の行為主体は同社だ」と判断したようでして、このカラオケ法理を採用したようです。
次に公衆送信権侵害について検討してみることにします。公衆送信権の規定は著作権法23条1項に置かれています。
(公衆送信権等)
第23条1項 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
公衆送信の定義規定は著作権法2条1項7号の2にあります。
第2条1項7号の2 公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(有線電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。
公衆送信には放送、有線放送などいくつかの種類があるのですが、本件で問題になるのは、そのうち自動公衆送信といわれるものです。これは著作権法2条1項9号の4に定義規定があります。
第2条1項9号の4 自動公衆送信 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。
本サービスにおいては、ユーザーがストレージに音楽データをアップする行為が公衆送信権のうち、自動公衆送信権及び送信可能化権を侵害するのかどうか問題になります。
ここで問題になるのは、公衆送信権はあくまで「公衆」に直接受信されることを目的とするものでなくてはならないという点です(著作権法2条1項7号の2)。
著作権法における「公衆」とは不特定又は多数の者をいいます。
第2条5項 この法律にいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする。
ですからユーザーが自分自身に送信するためにデータをアップロードする場合には、公衆送信権侵害にはなりません。本サービスもダウンロードができるのはユーザー自身に限定されていたようですから、ユーザーには公衆送信権侵害は成立しないわけです。
ユーザーに公衆送信権侵害が成立しない以上、業者にも侵害の幇助は成立しません。
そこでふたたびカラオケ法理を適用して、イメージシティ社自体が多数のユーザーに送信をしていると考えることができないか問題になるのです。
すでに検討したように、本サービスにはカラオケ法理を適用することができます。
報道によれば、東京地裁は「システムの中枢になるサーバーは同社が所有、管理しており、同社にとってユーザーは不特定の者。複製と公衆(不特定多数)への送信の行為主体は同社だ」として、イメージシティ社自体を公衆送信権侵害の主体としています。
インターネットで一般的に利用されているストレージサービスは、著作権法的には真っ黒だったというわけです。
実はカラオケ法理の拡大適用には、批判もあるのですが、裁判例は相当数積み上がっていますので、イメージシティ社が本判決を覆すことは難しいと思います。
今後他社のストレージサービスがどうなっていくのか、気になるところですね。
追記
本件でも差止請求権の存否が争点になっていたということが、JASRACのプレスリリースに記載されていました。
追記2
コンビニのコピー機は30条1項1号の自動複製機器にあたります。しかし、コンビニで文書のコピーをすることは違法ではありません。原始附則5条の2が、これを規定しています。
(自動複製機器についての経過措置)
第5条の2 新法第30条第1項第1号及び第119条第2号の規定の適用については、当分の間、これらの規定に規定する自動複製機器には、専ら文書又は図画の複製に供するものを含まないものとする。
文書及び図画の複製については、30条1項1号の自動複製機器を用いて行っても私的複製とされるのです。もっとも「当分の間」と規定されていることから分かるように、この規定は経過措置ですので、いつ廃止されてもおかしくありません。
追記3
本件の判決文がアップされたようです。
東京地判平成19年5月25日
最判昭和63年3月15日民集42巻3号199頁
原審の適法に確定したところによれば、上告人らは、上告人らの共同経営にかかる原判示のスナック等において、カラオケ装置と、被上告人が著作権者から著作権ないしその支分権たる演奏権等の信託的譲渡を受けて管理する音楽著作物たる楽曲が録音されたカラオケテープとを備え置き、ホステス等従業員においてカラオケ装置を操作し、客に曲目の索引リストとマイクを渡して歌唱を勧め、客の選択した曲目のカラオケテープの再生による演奏を伴奏として他の客の面前で歌唱させ、また、しばしばホステス等にも客とともにあるいは単独で歌唱させ、もって店の雰囲気作りをし、客の来集を図って利益をあげることを意図していたというのであり、かかる事実関係のもとにおいては、ホステス等が歌唱する場合はもちろん、客が歌唱する場合を含めて、演奏(歌唱)という形態による当該音楽著作物の利用主体は上告人らであり、かつ、その演奏は営利を目的として公にされたものであるというべきである。けだし、客やホステス等の歌唱が公衆たる他の客に直接聞かせることを目的とするものであること(著作権法二二条参照)は明らかであり、客のみが歌唱する場合でも、客は、上告人らと無関係に歌唱しているわけではなく、上告人らの従業員による歌唱の勧誘、上告人らの備え置いたカラオケテープの範囲内での選曲、上告人らの設置したカラオケ装置の従業員による操作を通じて、上告人らの管理のもとに歌唱しているものと解され、他方、上告人らは、客の歌唱をも店の営業政策の一環として取り入れ、これを利用していわゆるカラオケスナックとしての雰囲気を醸成し、かかる雰囲気を好む客の来集を図って営業上の利益を増大させることを意図していたというべきであって、前記のような客による歌唱も、著作権法上の規律の観点からは上告人らによる歌唱と同視しうるものであるからである。
したがって、上告人らが、被上告人の許諾を得ないで、ホステス等従業員や客にカラオケ伴奏により被上告人の管理にかかる音楽著作物たる楽曲を歌唱させることは、当該音楽著作物についての著作権の一支分権たる演奏権を侵害するものというべきであり、当該演奏の主体として演奏権侵害の不法行為責任を免れない。カラオケテープの製作に当たり、著作権者に対して使用料が支払われているとしても、それは、音楽著作物の複製(録音)の許諾のための使用料であり、それゆえ、カラオケテープの再生自体は、適法に録音された音楽著作物の演奏の再生として自由になしうるからといって(著作権法(昭和六一年法律第六四号による改正前のもの)附則一四条、著作権法施行令附則三条参照)、右カラオケテープの再生とは別の音楽著作物の利用形態であるカラオケ伴奏による客等の歌唱についてまで、本来歌唱に対して付随的役割を有するにすぎないカラオケ伴奏とともにするという理由のみによって、著作権者の許諾なく自由になしうるものと解することはできない。
との法解釈の差異が良くわかりません。
上記pdf 第4.2.(1).エ
の
「債務者がサーバの管理に関与していない」
「システムの所有権がユーザにある」
というのがポイントになるのであれば、
「ユーザ1人あたり1つのサーバを用意し、それをユーザ自信が所有・管理する」という形にすれば、法解釈としては問題無くなるのでしょうか。
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070419_worlds_largetst_itunes_collection/
が「日本の著作権法では複製権侵害にあたるので注意が必要です。」と書いてある理由を教えてくれませんか?
ただ単に自分で聞く為にCDからリッピングしても「起草者」の言うところでは違法だと?
レンタルしたもので無くても?
それと、法律に詳しくないのでアホな質問になりますが、起草者ってどれだけの権力があるんですか?
起草者の仕事は法律の条文を定めることですよね?
裁判官による解釈(=運用)が起草者の意図したことと異なっていた場合、そんなのはちゃんとしたアウトプットを書けなかった起草者がウンコだったって事ですよね?
ちょっと神聖な扱いをしてるように見えたので気になりました。
コメントありがとうございます。
まねきTVでは複製をしていません。ですから複製権の幇助という論点と複製権侵害(カラオケ法理)という論点はなくなります。
そこで公衆送信権侵害のみが問題になります。
まずロケーションフリーは1台につき、1台のPCにしか送信できませんから、「公衆」に対する送信とはいえず、ユーザーは公衆送信権侵害になりません。よって業者に公衆送信権侵害の幇助は成立しません。これは本件と同じです。
そこでカラオケ法理を適用して業者を侵害主体とみなせないかという問題になります。
今回の事例とまねきTVとでは次のような違いがあります。
本件ではソフトウェアが独自開発であったのに対して、まねきTVではロケーションフリーにあらかじめ組み込まれた汎用品を使用していた。
本件では1台あるいは数台のサーバーが全ユーザーにサービスを提供していたと思われるのに対し、まねきTVでは1台のロケーションフリーが1人のユーザーにサービスを提供していた。
本件ではサーバーを所有するのは業者だが、まねきTVではユーザーがロケーションフリーを所有していた。
本件では業者がパスワード認証をしていたようですが、まねきTVでは業者によるパスワード管理などは行われていない。
このような要素から管理支配性がないと判断され、カラオケ法理を適用することができなかったのだと思います。カラオケ法理によって業者を送信主体とすることができないならば、公衆送信権侵害は成立しません。なぜならば、上記のように個々のユーザーは自分に送信しているだけで「公衆」に対しては送信していないからです。
ご指摘になったような、
「債務者がサーバの管理に関与していない」
「システムの所有権がユーザにある」
というのも管理支配性を判断するにあたって重要な考慮要素だと思いますが、録画ネット事件では違法と判断されています。ユーザー自身が管理するといっても、どこまでユーザーが管理しているのかが問われるでしょうし、業者が開発したソフトウェアを使用しているのかどうかという点も大きいと思います。
もしナガブロさんの法解釈が正しいのであれば、これは法律が間違ってますね。
コメントありがとうございます。
私的複製の根拠は著作物の通常の利用と衝突せず、著作者の経済的な利益を害するおそれがないことにあるわけですが、起草者は巨大なライブラリの構築はこの根拠と適合しないため、著作権法30条本文の規定が適用すべきでないと考えているようです。
元の文献から該当部分を引用しておきます。
「個人的使用のためであるからといって家庭にビデオ・ライブラリーを作りテレビ番組等を録画して多数の映像パッケージを備える行為が認められるかといいますと、ベルヌ条約上許容されるケースとしての「著作者の通常の利益を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しないこと」という条件を充足しているとは到底いえないという問題が出てまいりましょう。本条(引用者注:30条)の立法趣旨が閉鎖的な範囲内の零細な利用を認めることにあることからすれば、度を過ぎた行為は本条の許容する限りではないと厳格に解すべきであります」(『著作権法逐条講義(五訂新版)』(2006年、著作権情報センター)、225頁)
考えてみると、自分の購入したCDでライブラリを構築しているような場合には、「著作者の通常の利益を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しないこと」という条件を満たしているといえますから、問題ないのではないでしょうか。まあそのCDがその後中古として売却されているということになってくると微妙になったりするのかもしれませんけれど。よくよく考えればレンタルCDなんかでも著作者に対価が支払われているわけですしね。ちょっと言い過ぎたかもしれません。
起草者の見解がどれだけ重視されるべきかという点については、議論がある点だと思います。
今回事件の判決を書いた高部判事は「ローマの休日」事件において立法者意思は国会の具体的審議からのみ読み取られるべきであるというスタンスで判決文を書いているようです。この高部判事のスタンスを作花文雄先生はコピライト2006年12月号23頁で、激しく批判しています。もっとも作花先生は自身が立法担当者ですから、憤懣やるかたない気持ちだったんだろうなと思います。
個人的にはやはり立法者意思は国会の審議経過から読み取られるべきなんだろうなと考えます。立法担当者(起草者)の解説というのはあくまで参考にしかなりません。
起草者の扱いが神聖っぽく書いてあるのは、ぶっちゃけると趣味です。「この点、起草者は……」とか書くの大好きなんです。民法だと梅謙次郎とか。
まあでも、起草者の見解は国会で説明されていて、その前提で審議されていることが多いですから、反駁するには国会の審議経過をつぶさに見ていく必要があるんでしょうね。
こういうのも、日本のITがインフラ整備は世界一なのに、肝心のサービスにおいては革新的なものが出てこない(上述されているITunes music storeとか)原因な気がします。明らかに日本だけ新規サービス対応がはぶられていますし。
ここでいう違法な複製、つまりナノ秒の世界で「パケットの複製」が行われてしまいます。
もっと突き詰めれば、フォン・ノイマン型のコンピュータは全否定されます。リモートでデスクトップのような遠隔操作システムで、メインメモリからレジスタにデータを移した段階で違法な複製になってしまいます。
この点についてどうお考えでしょうか?
しかし、理解するもの一苦労ですね。
判決結果だけを見て、早合点してました(^^;
ご回答ありがとうございます。
独自開発かどうかも管理支配性の判断の参考になるんですね。
サーバの所有権の移転だけでは管理支配性を否定しきれないのもポイントになるでしょうか。
システム管理者としては、本件については少し神経質にならざるを得ません。
カラオケ法理の解釈のみをみますと、著作権を侵害しているファイルをメールに添付して送信すると、メールサーバの管理者に対し公衆送信権侵害が成立してしまうとの解釈ができそうです。(ついでに複製権侵害幇助も着いてきますね…)
いわゆるプロバイダ責任制限法で回避できるかとも思いましたが、上記法令の三条一項の適用は判例によって否定される事もあるようです。
→http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20050103/1106043275
確実に司法責任を回避するには、サーバ管理を放棄するしかないかもしれません…
MYUTAが違法なら当然すべてのストレージサービスは違法ではないですか?
MYUTAは音楽に特化しているだけであって、やってることは一般のストレージサービスと何も変わらない。
逆の言い方をすれば、一般のストレージサービスにも音楽データはUPすることは可能なわけです。
もっと言えばストレージにすら限りませんね。
メールも違法、WEBも違法、結局インターネットはすべて違法。
もう少し自分で調べたほうが良いのでは?
ここは質問相談する場ではありませんし。
本文中で出ておりますカラオケ法理について、一点疑問がありましたので、ご質問させていただければと思います。
疑問点というのはカラオケ法理をもって、イメージシティ社の行為を公衆送信とみなす事はできないのではないか、ということです。
その根拠についてですが、まずカラオケ法理の元となる判決について、私は以下二点に論点を分割できると考えます。
1.行われた歌唱(=演奏)行為はスナックの雰囲気作りとして不特定多数の客に聞かせるものであるから、営利を目的とし公にされたものとみなされる(演奏行為の認定)
2.カラオケ利用にスナック側の操作や機器準備などを伴うこと、及び店側が客による歌唱(=演奏)を営利目的に利用していたことから、演奏の主体はスナックであるとみなしうる(スナックに対する主体性の認定=カラオケ法理)
3.カラオケテープに対して支払われる利用料はあくまで複製権に関するもので、演奏に関する利用料は徴収されていない(演奏に関する利用料未払いの認定)
ここで、2項に注目していただきたいのですが、カラオケ法理はあくまで「客が行った演奏の主体が店である」と論じているだけであり、「客の行為は演奏ではないにもかかわらず、店の行為を演奏とみなした」わけではないと考えます。
さて、エントリ本論においては、ユーザによって行われる視聴はあくまでユーザ個人のためのものであり、その送信は個人に限定されることから、その送信行為は公衆送信にはあたらないと解釈されています。
ここでユーザが行った行為に対してカラオケ法理を適用し、イメージシティ社を行為の主体とみなした場合も、「送信対象が公衆ではない」点には変化がないはずです。以上から、イメージシティ社の行為に対してカラオケ法理を適用したとしても、同社が公衆送信権侵害を行ったとみなすことは出来ないのではないでしょうか。
もしイメージシティ社が公衆送信権侵害を行った旨が認定されているならば、それはカラオケ法理とは無関係に、ユーザの集団を「特定かつ多数=公衆」とみなして、公衆送信を行ったものと定義づけたのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
読みにくい長文にて申し訳ありませんが、お時間がありましたらお返事頂ければ幸いです。
カラオケ法理の根拠となる判決については、論点は3つでした。訂正いたします。
また、イメージシティ社に対して複製権侵害に対してカラオケ法理を適用することについては、特に疑問点や異論はございません。この点追記させて頂きます。
違法でも親告が無い限り抑制力は無いのが現状で、今回のように「じゃあアレもコレも駄目か」といっても親告する人が居なければ意味がありません。
ただ、見せしめという意味で効果は上がってるようですが…
さて、JASRACは元々「日本音楽著作権協会」という名の団体で、町の片隅にあるバーで流れてた音楽ですら著作権違反だと言って取立てする、空気を読まないヤクザ行為取立てで有名です。
ちなみに法律上違法でも黙認されているケースはいっぱい有ります。
日本で代表的なのは同人活動、コミケ等で
「非商用・商用を問わず原著作者の許諾が無い限り著作権侵害で違法」
に思いっきり触れております。
これはなぜ親告されないかというと著作権所持側が二次著作物製作者によって商売が成り立つという変な立場に居るからです。
二次著作物によって大本の作品を賛同するユーザが増え人気が加速していく等の作用がある為です。
んでもって空気を読まずに違法違法と騒ぎたてるJASRACは日本の音楽業界を急速に縮小させています。
取立て行為もそうですが、大本の著作権を有する者に取り立て金が行くわけでもなく、何一つ得が無い。これで批判を受けない筈が無く他人のふんどしで一方的な利益を獲得してる状態。
そして作られた音楽が人々の耳に入らずそのまま活動を止める人が多数発生し衰退しています。
これが「それはそうだけど」をゴリ押した空気を読まない企業の活動成果です。
金の亡者以外JASRACを支持する人は居ません。
コメントありがとうございます。
考え方はいろいろあるような気がしますが、具体的にどのような場面を想定するかによって使える考え方と使えない考え方があると思います。
たとえば、インターネットにコンテンツをアップした以上、ルーターなどにおける複製には黙示の許諾が与えられていると考えることもできます。
しかしこの説明は、コンテンツに明示で許諾を与えない旨表示されている場合だとか、コンテンツ自体が権利者以外の者によって許諾を得ないで作成された場合などには使えないでしょう。
あるいは、RAMにおけるコピーが有形的再製、つまり複製にあたるのかどうかは議論のあるところです。田村善之先生などは、gardiacさまと同じ問題意識から、RAMへの記録は電源断によって消失する一時的な記録に過ぎず、原則として有形的再製にはあたらないとしています(田村善之『著作権法概説(第2版)』(有斐閣、2001年)、118頁)。
もちろん違法なんだということも可能だと思いますし(結論としての妥当性は疑問ですが)、他の理屈で説明することもできると思います。
本サービスが「著作権法30条1項1号」に該当するというのはしかたがないと思いましたが、カラオケ法理の適用というのは少々驚きました。この「著作権法30条1項1号」が“ない”と仮定すれば(本サービスによる複製が私的と認められる)、セーフになるのでしょうか。
もともと「著作権法30条1項1号」は、レンタルレコードへの対抗策としてできたものと理解していますが、私はレンタルレコード(CD)に反対しており、その意をますます強くしているところです。
コメントありがとうございます。
カラオケ法理はカラオケボックスにも拡大適用されています(東京高裁平成11年7月13日判時1696号137頁〔ビッグ・エコー事件〕)。
演奏権とは、著作物を公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として演奏する権利をいいます(著作権法22条)。カラオケボックスの中には特定少数の友人しかいないわけですから、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として演奏しているとはいえないはずです。
しかしこの判例は「伴奏音楽の再生及び顧客の歌唱により管理著作物を演奏し、その複製物を含む映画著作物を上映している主体である控訴人らにとって、本件店舗に来店する顧客は不特定多数の者であるから、右の演奏及び上映は、公衆に直接聞かせ、見せることを目的とするものということができる。」としています。
ユーザーが行った行為は著作権法上の演奏権を侵害していないのに、カラオケ法理を適用してカラオケボックスを主体とみなすことによって、演奏権侵害を認めたわけです。
公衆送信権の場合も、これとパラレルに考えることができると思います。
コメントありがとうございます。
ちょうどその部分はすこしわかりにくく書いてしまったのではないかと思っていたところです。
結論からいえば、この判決はおそらく著作権法30条1項1号には触れていないのではないかと思います。
なぜならば、JASRACのプレスリリースによれば、本件では差止請求権の存否が争われたようなのですが、本文にも書いたように、著作権法30条1項1号を根拠にした法律構成では著作権侵害の幇助しか成立せず、差止請求権が導き出せないからです。
もっともこれに対しては112条1項を類推適用できるという説もあり、大阪地裁にはこれを認めた裁判例もあります(大阪地裁平成17年10月24日判時1911号68頁〔選撮見録事件〕)。しかし東京地裁は「差止請求の相手方は,現に侵害行為を行う主体となっているか,あるいは侵害行為を主体として行うおそれのある者に限られると解するのが相当である。」として、明確にこの考え方を否定しています(東京地判平成16年3月11日判時1893号131頁〔「罪に濡れたふたり」事件〕)。
ですから、著作権法30条1項1号によって私的利用を否定して幇助を成立させるという法律構成では差止請求権を認めることはできません。
そこで、カラオケ法理の出番となるわけです。カラオケ法理を用いて主体をサービス提供業者とした場合には、そもそも私的利用にあたらず、30条1項柱書の適用がありませんから、著作権法30条1項1号の適否は問題にはなりません。
カラオケ法理が適用される以上、著作権法30条1項1号にかかわらず、アウトになるわけです。
東京地判平成16年3月11日判時1893号131頁〔「罪に濡れたふたり」事件〕
「著作権法112条1項は,著作権者は,その著作権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができる旨を規定する。同条は,著作権の行使を完全ならしめるために,権利の円満な支配状態が現に侵害され,あるいは侵害されようとする場合において,侵害者に対し侵害の停止又は予防に必要な一定の行為を請求し得ることを定めたものであって,いわゆる物権的な権利である著作権について,物権的請求権に相当する権利を定めたものであるが,同条に規定する差止請求の相手方は,現に侵害行為を行う主体となっているか,あるいは侵害行為を主体として行うおそれのある者に限られると解するのが相当である。けだし,民法上,所有権に基づく妨害排除請求権は,現に権利侵害を生じさせている事実をその支配内に収めている者を相手方として行使し得るものと解されているものであり,このことからすれば,著作権に基づく差止請求権についても,現に侵害行為を行う主体となっているか,あるいは侵害行為を主体として行うおそれのある者のみを相手方として,行使し得るものと解すべきだからである。この点,同様に物権的な権利と解されている特許権,商標権等についても,権利侵害を教唆,幇助し,あるいはその手段を提供する行為に対して一般的に差止請求権を行使し得るものと解することができないことから,特許法,商標法等は,権利侵害を幇助する行為のうち,一定の類型の行為を限定して権利侵害とみなす行為と定めて,差止請求権の対象としているものである(特許法101条,商標法37条等参照)。著作権について,このような規定を要するまでもなく,権利侵害を教唆,幇助し,あるいはその手段を提供する行為に対して,一般的に差止請求権を行使し得るものと解することは,不法行為を理由とする差止請求が一般的に許されていないことと矛盾するだけでなく,差止請求の相手方が無制限に広がっていくおそれもあり,ひいては,自由な表現活動を脅かす結果を招きかねないものであって,到底,採用できないものである。」
コメントありがとうございます。
いただいたコメントの趣旨が十分に理解できているのか自信がありませんが、おそらく所有権と著作権についての考え方にズレがあるのではないかと思います。あるCDを購入した場合に、音楽が収録された有体物としてのCDはユーザーに帰属にします。しかし無体物としての曲は作曲者に帰属したままなのです。
ここから導かれる答えは、「自分のコンテンツを預ける」という概念は不可能であるということです。なぜならCDに収録された曲はユーザーに帰属するのではなく、作曲者に帰属しているからです。CDを購入しても、曲の利用権が得られるわけではないという点に注意が必要です。
そしてカラオケは演奏という形で曲を利用する場合ですし、ストレージサービスは複製という形で曲を利用する場合です。そこに本質的な違いはないように思います。
管理人様、本文を拝見させて頂きました。
差止請求の文を境目にして、前半と後半、どうも解釈の流れが別物に見受けられます。
前半では会社側の主張が間違っている事と違法性を立証していますが、顧客側にも違法性はあります。
それに対して、後半ではカラオケ法理でもって主体を会社側とし、顧客は公衆として罪に問われていません。
法理から始まりギルティまで及ぶ流れを念頭に置くと、両者の間にある「導き出された違法者」の一貫性の無さに困惑してしまいます。
もしもこれが判決文に記してある、あるいは十分解釈できるのであるなら、そこから導き出されるのは、最終的なギルティを「便利な考え方で実際問題として処理しやすい形に辻褄合わせさせられた」ということではないでしょうか。
現実的に処理出来る形に持っていく事が、法の存在する根本理由ではありますが、少々ご都合主義過ぎるなという印象があります。
個人的には良い判例だとは思えませが、その辺、どのようにお考えでしょうか?
宜しければお聞かせ下さい。
あるいは、ニュース記事を元にして管理人様自身が二通りの考えを書いたものなのでしょうか(寧ろこっちか)。
もしそうでしたら、一人相撲を演じているなと笑い「そうだよ」と軽く返答してやって下さい。
実は、最初読んだ時は記事題名との相乗効果で本文内容=判決内容と信じ込んでしまったものでして(笑)。
リロード確認もせずに投稿してしまいました。
重複申し訳ありません。
だとすると、JASRACには、著作権侵害が起きていると証明する手立ては、ないんじゃないでしょうか。
あつかましくも追加でお尋ねしますが、一般的なホスティングサービス(レンタルサーバー)は合法とみなされていると思いますが、ここに「ユーザーが(誰かが作った)楽曲管理ソフトを組み込んで利用する」場合はいかがでしょう。MYUTAが録画ネットなら、これはまねきTV(合法)となるでしょうか。
さらに、wikipedia によればカラオケ法理は、日本国著作権法の“解釈”とあるのですが、このような解釈は日本固有のものなのでしょうか(ご存じであれば)。
「CDの利用権」という話が出ましたが、いわゆるmp3プレーヤーへの楽曲の複製(かつてならレコードからカセットへの複製)は私的複製の範囲とされていました。「現実世界のものをネット上で仮想的に実装する」(例:手紙→電子メール、会議→オンライン掲示板、ボードゲーム→オンラインゲームなど)ことが法律によって妨げられてしまうように思います。今回のサービスも、物理的なデバイスを買う代わりに、オンラインで仮想的に実装されたサービスを借りるようなものだと思います。もっとも、実際、オンラインテレビは、現実のテレビと違う法律が適用されているようではあるので、「法律が追い付いていない」ことはあっても、法の適用が間違っているとまでは思いませんが。
このご認定の根拠を教示願えますでしょうか?
それが正しいのであれば、空のカセットテープ・MD・CD-Rにダビングする事は違法で、私的複製の作成は許可されないということになるのでは?
その辺りの違いがわかりません。
ひとつ、上記、コメントの中で気になる点がありましたので、JASRACの著作権管理について、書いておきます。
JASRACの管理楽曲においては、著作権者はJASRACです。
著作者は作詞、作曲者ですが、JASRACとの信託契約において、JARACに著作権(財産権)を譲渡しています。
ひとつ、上記、コメントの中で気になる点がありましたので、JASRACの著作権管理について、書いておきます。
JASRACの管理楽曲においては、著作権者はJASRACです。
著作者は作詞、作曲者ですが、JASRACとの信託契約において、JARACに著作権(財産権)を譲渡しています。
つまりJASRACがこういう裁判をやるのは、PCやネットから録音録画補償金を掠め取る口実を作るためなんだろうね。
お話いただいた判例(裁判例?)を本事案に照らすならば、個々の送信対象が公衆ではなくても、主体としてのイメージシティ社が送信サービスを公衆に向けて提供していることから、公衆に対して送信を行っているものとみなす、となりますね。
実は、裁判例が確認できましたので、そちらにも目を通してみたのですが、公衆送信権侵害についてはほぼそのとおりの判断がなされているようです。
また、複製権侵害については、複製を行うシステムそのものがイメージシティ社の設計によるものであることが特に重視されているようですね。これについてもカラオケ法理に近い形に思えます。
(参考:本件の裁判例のアドレス)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070528141551.pdf
もう一点、主文ではないために参考程度ですが、単なるストレージサービスでユーザが同様の行為を行った場合は管理者の責とは言いがたい、といった文章も見られます。今回はやはり、音楽を前提としてシステムを構築し、サービスを提供したところが重視されたのでしょうね。
カラオケ法理をベースに論を展開するなら,この問いの立て方は語弊があるんじゃないでしょうか?
カラオケ法理の前提には「著作物の利用」があると思うのですが…
素人なので間違っているかもしれませんが,一応これを前提に書きます。
MYUTAの場合,「自動複製機を公衆(不特定多数)が利用できる」という状態が「著作物の利用」に該当する部分になってしまい,この部分があるからこその判決なのではないでしょうか。
したがって報道ベースの情報からカラオケ法理を用いた論理展開は,「なぜMYUTAは著作権侵害なのか」にしか適用できないのではないでしょうか。
一般的なストレージ・サービスはカラオケ法理の枠の外にあり,したがってこの判例はかなり限定的なサービスにしか適用できないように思うのですがいかがでしょうか?
情報ありがとうございます。本件の判決文のURLを追記に加えさせていただきました。
再度のコメントありがとうございます。
ユーザーが、自分でレンタルサーバーに楽曲管理ソフトを組み込んで利用した場合に、管理支配性が認められるかといえば、なかなか難しいのではないかと思います。
もっとも、たとえばQ&A頁などで、そのソフトの公開されているサイトを紹介したりとか、インストールの仕方を解説したりとか、その使い方をレンタルサーバー業者が勧奨しているようなケースでは、管理支配性を認める余地が出てくるかもしれません。
カラオケ法理に似ているという考え方としては、米国に代位責任という考え方があります。代位責任の要件は、カラオケ法理とほぼ同じですが、大きな違いとして、代位責任を認めるためには直接侵害が必要であるという点があるようです。とはいえ、その内容を詳しく説明することは、ぼくの能力を超えていますので、ご容赦いただきたいと思います。ご興味があれば、米国のナップスター事件判決およびグロックスター事件判決と日本のファイルローグ事件判決を比較してみるとよいと思います。
今回の判決をそのまま適用すると
ituneも黒になってしまうかもしれません。
iPodと言うストレージ領域を不特定多数に配布し、私的複製して利用する方法を推奨した楽曲管理ソフトを組み込んでますから。。
ネットワークストレージだけでの問題ではないんですね。
アップルは販売した楽曲の使用料は払いましたが、この理論で展開されると追加徴収されることになります。
今後とも、すばらしいエントリに期待しております。
根拠は次の三要素を満たしていると考えたからです。
1 公衆の使用に供することを目的として設置されている
2 複製の機能を有している
3 装置の全部又は主要な部分が自動化されている
1については、本件システムが多数のユーザーに供することを目的としていることは明らかであると思います。
2については、特にファイル形式を携帯で読み取り可能な形式にエンコードして複製することを重視できるかと思います。
3については、専用のソフトウェアが開発され、操作が簡略化されているところを重視できるかと思います。
まあ、上の方にも書いたように、この部分は判決文でも触れられておらず、そもそも私的複製ではないということを示すために、前提問題として記述したにすぎません。ですからこの論点について結論を出したとしても、結論は変わりません。
まぎらわしい書き方ですいません。
そういえば、北村行夫先生は録画ネット事件のサービスも公衆の使用に供することを目的として設置されている公衆用自動複製機器にあたると考えているようです(コピライト2007年4月号9頁)。
一方で小倉秀夫先生は、持ち帰り可能な複製物を増製しない機器は公衆用自動複製機器に含めるべきではなく、共用サーバコンピュータを含まないことを明示すべきとしています(「法制問題小委員会報告書(案)に対する意見」 on Sep. 2006(BENLI))。
↓リンクです。
http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2006/09/_on_sep_2006_1aec.html
小倉先生の立場を取れば、今回も公共用自動複製機器にはならないということになるのかもしれません。
コメントありがとうございます。
空のカセットテープ・MD・CD-Rに楽曲をダビングすることは、私的複製にあたります。私的複製にあたる行為は利用権がなくとも問題なく行えます。というのも、私的複製にあたる部分には、そもそも著作権が及びませんから、許諾は不要なわけです。
なんだか、かえってまぎらわしい書き方をしてしまったかもしれません。混乱させてしまったら、申しわけありません。
ただ1点だけ、分からなかった部分が。
今回の争点の1つとして、ユーザーという存在が『公衆』であるのか、また『不特定』であるのかという問題があったと思いますが、現実としてイメージシティ社はユーザー個人と契約を結び、名前や住所ではないにしても、IDやパスワード、更にはPCやケータイといった端末の判別によって個人を特定出来る状態にあったと思いますが、それでも『不特定』とされてしまうのでしょうか。
これがもし、個人の名前・住所等をイメージシティ側へ個人情報として提供するカタチであったならば、今回の件は『公衆』扱いされなかった可能性があるという事なんでしょうか。
法が定める『公衆』という定義が、今のインターネット事情にそぐわないような気がしてなりません。
イメージシティ社が行っていた行為が、いわゆる『ダビング屋』であったという部分で損害賠償請求されるのなら納得がいきます。(差し止めは納得いきません。)いわゆるストレージサービスとは一線を画す『複製装置を利用した商売』であったというのも納得はいきます。
しかし、IDやパスワード、そしてPCやケータイを特定していても『不特定』とされてしまうなら、何を以って『個人』と『特定』するのでしょうか。実際にはIDやパスワードによってその個人のみをサービスの利用を停止したりも出来る訳で、この時点で『個人が特定出来る手段』にはあたらないのでしょうか。
もしこれが『それでも不特定です』となれば、インターネット上における『個人』の定義が非常に狭くなるような気がします。そもそもユビキタス時代において、本人の名前と住所だけが個人を特定するものであって良いのか、そこから歪みが生じているようにも思えますが。
1無料であること
2画像ファイルとテキストファイルのみ
(3複製後は私的利用のみ)
複製権の侵害について
著作権法附則 第5条の2によりますと自動複製機器には、文書又は図画の複製に供するものを含まない
とあるので画像ファイルや文書ファイルもこの例外に含まれると考えられる
公衆送信権侵害について
無料であれば利益の取得性があるといえずカラオケ法理が適用されないのではないか?
もちろんカラオケ法理が適用されないというだけで、利用者個々が訴えられる可能性は残りますが、サービスの差し止めはできなくなるのではないでしょうか?
画像掲示板や画像アップローダなどセーフになりそうな気がしますが、これが通ると、悪用して拡張子をとりあえずtxtとかjpgに代えておけってなるかもしれませんが(笑)
和三盆さま
著作権法における「公衆」は、不特定又は多数ですので、特定されていても多数であれば「公衆」になってしまいます。
また不特定という点については、本判決は「インターネット接続環境を有するパソコンと携帯電話を有するユーザーが所定の会員登録を済ませれば、誰でも利用することができるものであり、原告がインターネットで会員登録をするユーザーを予め選別したり、選択することはない。」としてこれを認めています。
契約関係があるから不特定ではないという主張は、よく見かけるような気がしますが、契約関係のある人にだけサービスを提供したわけではなく、まさにサービスを提供するために契約を締結しているわけですから、これは認められないと思います。
公衆送信権の「公衆」要件は、著作権者に利益を環流させる必要がないほど小規模な送信かどうかという観点から判断されますから、相手の身元が判明したかどうかという点ではなく、サービスの対象が限定されているかという点が重要なのではないかと思います。
コメントありがとうございます。
サービスの対価は無料でも、広告収入や他のサービスへの誘因として用いられているようならば、カラオケ法理を適用する余地が出てくるのではないかと思います。
またカラオケ法理を適用することなくプロバイダの公衆送信権侵害を認めたケースとして東京高判平成17年3月3日判時1893号126頁(「罪に濡れたふたり」事件控訴審判決)があります。この判例は、侵害行為の放置自体を侵害行為と評価すべき場合があるとされています。
この場合にも差止が認められることになります。
判決文を読んでいて疑問に思ったのですが、「公衆送信権」について考える場合、送信する行為をどのような単位で論じるべきなのでしょうか。
といいますのは、本事案のような状況で送信行為が公衆送信にあたるかどうかを論じる場合、
1.送信サービス全体
2.各著作物単位での送信行為
3.データ単位での送信行為
以上3つのどれに注目するかによって、公衆送信に当たるかどうかの判断、そしてその判断を下すまでのロジックが異なるように思えるのです。
サービス全体として捕らえれば、ユーザは不特定多数であるから公衆送信。著作物単位で考えるならば、複数のユーザが同一著作物をアップロードする可能性は高いでしょうから、これも公衆送信に該当するでしょう。しかし、データ単位で切り分けるならば、各送信行為の対象は一人のユーザに限定されており、特定かつ少数と見なせるように思えます。
インターネット上で行なわれる議論でも、データ単位に着目したと思われる意見をよく目にしますが、判決文からするとJASRAC側は著作物に、イメージシティ社はデータに、裁判官はサービスに着目しているように見受けられます。
個人的には、著作権法の目的からして著作物単位で判断をするべきだろうと考えたのですが、何分素人考えに過ぎません。法学に携わるnabalog様から、一般的な考え方についてご教示頂けましたら幸いに存じます。
追伸……というより、ちょっとしたぼやきなのですが。
判決文の35頁において、公衆送信権に関するイメージシティ社の主張について述べていますが、正直あの説明ではデータ単位での送信行為に着目しているにもかかわらず、送信対象が不特定多数であると述べているようで、技術屋としては得心しかねるものがあります。もうちょっと書き方に気を使って貰えるとありがたいなあ、といったところです。
サイトの運営のため(自動返信等で)削除の手順を踏むようお願いしても「侵害行為の放置」に相当し、放置しているサイト運営者を侵害行為の主体とみなせるのですね。キビシー
当たり前なのかもしれませんが、投稿されるコメントに全て目を通すコトが必要なのですね。サイト内のどこで削除要請がでてくるかわからないですし。
大変勉強になりました。ありがとうございました。
法のこの一分の根拠は何なのでしょうか・・・
分かり易い解説ありがとうございます。なるほど、インターネットという媒体を利用する限り、サービス提供者側が広くユーザーを募った時点で『公衆』扱いなのですね。
となると、余計に法と現実とのズレのようなものも感じますね。
恐らく今後、ソフトウェアとオンラインサービスを組み合わせた商法というのは非常に難しくなるのでしょうね。確かに『今まで無かったものだから無いままで十分だ』という意見もあると思いますが、インターネットという場における可能性を縮小させると言う意味では、今後の技術発展や国益としての進歩を考えると、マイナス面も多分にあるように感じます。
再度のコメントありがとうございます。
確かにそうですね。「公衆」の認定において、「多数」ではなく「不特定」に着目して認定しているのはなぜだろうかと疑問を持っていたのですが、シャリオさまのご指摘の問題があるからかもしれません。
しかし不特定かどうかという問題にしても、誰でも契約の相手方になりうるという意味では不特定かもしれませんが、アップロードした者しかダウンロードできないという意味では特定されているような気がします。
とすると、この判決は論理的に破綻しているような気もします。
ぼく自身はけっこう単純に、送信の主体がユーザならば公衆送信にはあたらないけれど、送信の主体が業者であれば公衆送信になるんだろうと考えてしまっていたのですが、ご指摘の点を考えてみて、主体を転換するだけでは公衆送信にはならないように思いました。
結論としても、侵害にあたらないと考える方が妥当な気もしますし、案外そういう詰めた考え方を提示することで逆転可能な判決なのかもしれません。もっとも複製権侵害については別に考慮する必要があると思いますけれど。
雑駁な考え方を猛省します。
むしろぼくはシャリオさまのいう著作物単位で考えるという考え方にはあまり根拠がないようにも思います。
この点についてのジャスラックは「自動公衆送信とは,送信の要求があった特定の著作物を当該要求をした特定の相手方に送信する行為であるから,自動公衆送信が行われる局面において,著作物と送信先は,常に1対1の関係にあり,これによって何ら公衆送信権侵害が否定されることはない。そして,公衆送信において,公衆によって直接受信されることを目的としているか否かは,前記(1)のとおり,相手方が送信の主体にとって,不特定の者といえるか否かによって決められる。」(判決15頁)と主張していますが、特定のデータが多数の者によって受信されることを前提としている場合と、特定のデータがアップロードした者によってのみ受信されることを前提としている場合とでは、場面が異なるように思えます。
どうもありがとうございます。勉強になりました。
コメントありがとうございます。その点につきましては上の方でばっかでーす♪さまのコメントにお返事を書かせていただいた部分で起草者の記述を引用してありますのでご参照ください。
追記ですけれど、奥村先生のブログにこの点に関連する記述があります。参考までに。
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20070529/1180426259
さて、公衆送信の判断については、現役法曹の方も含めて疑問を呈していることが分かり、少なからず安心いたしました。最も、複製権についてはさほど怪しい部分もなく、差し止めの無効を認めさせる事は困難に見えますね。
もう一点、著作物単位での判断についてですが、判決文よりnagablo様が引用された部分こそ私が「JASRACは著作物単位で話を考えているのではないか」と述べた根拠でもあります。
これはJASRACがあえて「『著作物』と受信者」という形態で論じている点から類推したものですが、よく読んでみれば、その後の段において「公衆送信の判断についてはサービスの利用者が公衆であることをもって論じる」旨の主張につながっていました。
加えて、奥村先生のBlogに掲載されているWinny事件の判決文では、各情報単位の送信をもって論じているようであり、このことからも著作物単位での判断は一般的ではないと言えそうです。
この件については、私の勇み足ということで撤回させて頂ければ幸いです。