ブログなどでたとえばレストランの料理や映画などを辛口評価すると、それが事実でも名誉毀損に該当するんだって。
驚き桃の木だあ!
そう考えると、雑誌やテレビで、レストランや映画などのレビューが甘口になりがちなのは、仕方ないことなのかって思った。
だって、料理食べて、まずい、とか、映画観て、つまんない、って書いたり言ったら、名誉毀損になるわけだから。
愉快痛快(^_^)奇奇怪怪(*_*;)「ブログの辛口評価は事実でも名誉毀損」
そんなわけがない。この記述には基本的な誤解がある。もっともその誤解がブログ主のものか新聞記者のものかはわからないけれど。
まず事実と意見の区別がついていない。事実とは証拠によって認定できる事柄をいう。料理がまずいかうまいかは、証拠によって認定することができない。これは事実ではなくて意見である。
名誉毀損は公然と他人の名誉を毀損するような「事実を摘示」しないと成立しない。
まずいと書いても事実を摘示しているとはいえないから、名誉毀損にはならない。刑事(逮捕されるかどうかという問題)はこれで解決でよい。
もっとも民事(損害賠償させられるかどうか)上の名誉毀損は、刑事上の侮辱罪を包摂しているから、事実の摘示がなくとも成立する場合がある。
ただし事実の摘示がない場合に名誉毀損が成立するのは、その記述が人格攻撃にまで及ぶような例外的場合に限られるとされている。単にまずかったと書いただけでは成立しないのはもちろんのこと、人格攻撃に及ぶと認定されて名誉毀損が成立したとしても、賠償額はごくごく些少なものにとどまる(侮辱罪の刑事罰が非常に軽いのを確認してみてほしい)。
あと「事実を摘示すると名誉毀損になる」というと、「え、本当のことを書いても名誉毀損になるの!」という人がいるが、二重の意味で驚いて欲しい。
まず事実と真実とは違う。事実とは証拠によって認定できることがらであって、その真偽は問題にならない。ほんとうのことというのは「事実」ではなく「真実」である。
真実でも名誉毀損は成立しうるけど、公共の利害にかかわることがらで公益目的があって、真実と信じるに足りる相当な理由があれば、成立しない。なぜそうなるかというと、次のような例を考えてみて欲しい。
高校生が担任について学校裏サイトで次のような記述をした。
「担任のAは昨日TUTAYAでAVを借りていた。」
これは証拠によって認定可能であるから事実摘示がある。そしてAの社会的評価を低下させるから名誉毀損にあたる。
またいくら教師といってもAVを借りようが借りまいが公共の利害にかかわりはない。たとえ真実であっても名誉毀損となる。
追記
「名誉毀損にならない辛口」(Over100)というエントリを見つけたが、この作戦は無意味である。
判例は事実摘示には、通常の事実摘示のほかに間接的な事実摘示(えん曲・誇張・比喩などを用いた場合)と黙示の事実摘示があるとしている。
普通の人が察することができるならば、黙示の事実摘示にあたる。まあ味はそもそも事実ではなくて意見なので、黙示だろうが明示だろうが関係ないですけれど。
インターネットなら何をやってもいいのか!
http://www.ntv.co.jp/horitsu/20070513/3.html
コメントありがとうございます。
番組でも、ブログの相手から慰謝料を取れる可能性は30%となっていて、慰謝料は難しいということですから、大体このエントリと同じですね。妥当だと思います。
慰謝料を取れる場合というのは、人格攻撃に及んでいる場合とか、「スープにゴキブリを使っている」など具体的な事実摘示がある場合ということになるのではないでしょうか。
表現についてですが
1、「あの店は不味い」
2、「あの店は不味い、皆もそう言っている(そういう評判だ)」
2に関しての、後半部分は事実摘示になるのでしょうか、
その場合、名誉毀損になるのでしょうか?
2が名誉毀損になる場合、
3、「あの店は、凄く不味いという専らの評判なので試しに行ってみたが、そこまで不味いとは思わなかった」
という、本人は店を悪く評価していなくても、名誉毀損になる可能性があるのでしょうか?
コメントありがとうございます。2も意見にすぎません。
なお「あの店の寿司ネタは養殖ものばかりだ」というのは事実の摘示であって名誉毀損が成立する余地がありますが、「あの店の寿司ネタは養殖ものばかりだと皆が言っている」というのも伝聞による事実摘示(間接的な事実摘示)として同じように名誉毀損が成立する余地があるといえます。。
天然、養殖を明らかにしていない寿司屋について「この店のネタは養殖ばかりでまずい」とネットに書き込めばそれが事実であるかどうかは別にして名誉毀損が成立するということですね?
もし天然のネタだけを使っていると公言している店があった場合でも「この店のネタは養殖ばかりでまずい」とネットに書き込んで、それが真実であるかどうかにかかわらず名誉毀損は成立しますか?
寿司屋のネタが天然か養殖かは寿司屋を選ぶ基準の一つですから公共の利害にかなうと思うのですが。
AVを見る先生と見ない先生がいたらAVを見ない先生に教わりたいと思いますがこの場合は先生を選ぶという公共に利害とは認められないのですね?
コメントありがとうございます。
「この店のネタは養殖ばかりでまずい」という書き込みについてですが、まず「まずい」という部分は意見です。
問題になるのは「この店のネタは養殖ばかり」という事実摘示になります。
そして名誉毀損が成立するかどうかは、「養殖ばかり」という事実摘示が「名誉を毀損」するといえるか。つまりはその人の社会的評価を低下させるかという点にかかっているといえます。
「あの店は米の上に魚の死体を乗せて出している」というbogusnewsの事実摘示はおそらく寿司屋の社会的評価を低下させませんね。寿司屋とはそういうものだからです。
養殖ばかりという指摘が社会的評価を低下させるかどうかは具体的な事実関係との関係で決まってくると思います。
さて、天然ネタを出していると公言している店が養殖ネタを出している場合には、それは犯罪行為です。刑法の犯罪でいえば詐欺罪にあたりますし、特別法上の犯罪あるいは行政取締法規違反にあたる行為になりそうです。「公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす」という刑法230条の2第2項の規定を参考にすれば、真実であれば名誉毀損は成立しないという判断がなされる可能性が高いと思います。
さて、ここでまず刑法の規定にある「みなす」という言葉に注目していただきたいと思います。「みなす」とは本来異なる事柄を法律上は同一に取り扱うという意味です。すなわち法は人の犯罪行為であっても本来は「公共の利害に関する事実」ではないと考えているのです。
では「公共の利害に関する事実」とはいかなる事実をいうのか。(1)真実、(2)公益目的、(3)公共の利害に関する事実という要件を満たす場合に名誉毀損が成立しないのは、憲法21条(表現の自由)の趣旨を踏まえて、刑法の保護法益(人の名誉)と表現の自由を調整したためです。憲法が表現の自由を保護しているのは、民主的な意思決定過程のプロセスを保護するためですから、私人の私生活上の行状は原則として「公共の利害に関する事実」にはあたりません(判例には実際に例外が存在しますけれども)。
というわけで学校の先生のAVについてはご指摘のような結論でよろしいかと思います。